「君の名前で僕を呼んで」 愛の認識を変える、美しく官能的な物語

お題「我が家の本棚」

 

 映画化によって一気に知名度が広まった「君の名前で僕を読んで」。映画は2018年のアカデミー賞で脚色賞を受賞、その他作品賞、主演男優賞、歌曲賞にノミネートされた。

 今回はこの作品の、魅力を存分に伝えようと思ういます。

 

 

あらすじ

 17歳の少年エリオは毎年のように家族で避暑地に来ていた。毎年、そこには大学教授である父親の教え子が1人訪れる。今年はオリバーという青年がやってきた。

彼は、いつでも「あとで!」と言うなんだか気になる存在。2人の美しく官能的な一夏の愛が始まる。


 

 

美しい描写

 この本の舞台はイタリア。イタリアの地中海気候の夏。本では映像は見れないが、描かれる夏の描写には日本には無いイタリアの夏の様子が描かれる。

 海や、川で泳ぐ時。銅像が置いてある街の様子。食事の風景。描かれる一つ一つが読者にイタリアの夏を想像させる。

 本当のイタリアの夏を知らないからこそ、美しく感じてしまうのかもしれないが、一夏の恋にぴったりの描写がたくさんある。

 

リアルな心情

 この本で描かれる心情は主人公のエリオのものだけだ。オリバーはオリバーが話したことしか読者に伝わらない。それが、一層読者をエリオの視点からこの話に没頭させるのかもしれない。

 この小説で描かれる心情はリアルなのも特徴だ。誇張した美しさではなく、17歳の心にある恋愛の駆け引きによる焦りや怒りが率直に表現されている。エリオの魅力は等身大であることだ。17歳らしいのである。

 そして、官能的なシーンも描かれている。体を重ねる時、エリオは何を感じていたのか。そして、その中でタイトルでもある「君の名前で僕を呼んで」と言うセリフが誕生する。

 この本で描かれる心情はリアルだからこそ美しさを感じさせるのだと思います。

 

映画でより美しく

 ティモシーシャラメがエリオを演じた映画「君の名前で僕を呼んで」は、小説の美しさを全て映像にしたような作品だ。イタリアの景色から始まり、俳優たちの表情、仕草、全てが、視聴者をグッとさせる。

 本で読んだ世界がここに表現されている。

 登場人物は多くない。約130分の映画を飽きさせず見させられるのは、ティモシーシャラメとアーミーハマーの2人の役者としての実力の賜物なのだろう。

 ちなみに、私はこの映画でティモシーシャラメにすっかり魅了されてしまいました。

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 多くの世代に、多くの人に

近年はLGBTについても世間の認識が高まっている。しかし、なかなか受け入れられないのも現実だ。

この小説は若い男の恋の物語。それが、映画化されてアカデミー賞にノミネートされた。このことは多くの世代に認知され、理解される大きなきっかけになったのではないだろうか。

 きっかけを得て、この映画や小説を読み終わったときには、エリオの父親の言葉に胸打たれるだろう。

 多くの世代に、多くの人に、今の世界のあり方伝える作品だ。

 

 一つの素敵な恋の物語。ぜひ、触れて欲しい作品だ。

 

 

 

「ビューティフルボーイ」 美しき少年と薬物

今週のお題「読書感想文」

 先日読んだ本、ビューティフルボーイについて感想を書きたいと思います。

ネタバレありなので、ご了承ください。


 

 

あらすじ

 ジャーナリストのデヴィッドは息子のニックと妻カレンと暮らしている。しかしニックの母親ヴィッキとは離婚しており、ニックは長期休みのたびに母親の元で過ごすという行き来を繰り返していた。

 そんな中、息子ニックが薬物を使用していることに気が付く。この本は、全てデヴィッドの語りで描かれたニックと彼を取り巻く人物の依存症との戦いの日々の実話である。

 

アメリカの深刻な薬物問題

 アメリカでの薬物の問題は深刻である。2017年には6万4千人が薬物の過剰摂取で亡くなった。この本でも、中学、高校、特に大学という場で身近に薬物が存在していた。私立の学校に通っても、頭のいい学校に通ったとしても、薬物の誘惑は変わらずあるのがアメリカの現実なのかもしれない。正直、ずっと日本の私立で過ごしてきた自分には想像がつかない世界だ。

 精神的ストレスから薬物に手を出し、依存にまで陥り、さらに精神がおかしくなる。そんな悪循環がわかっていながら、一瞬だけ与えられる快楽に誘惑される。そんな薬物は想像がつかないと同時に恐ろしいものだ。

 ニックの薬物へのきっかけは、マリファナから始まる。ニックに限らず、初めはマリファナが多いという。そこから、次に薬へと使用範囲が広くなっていくのだ。ニックがはじめにマリファナに手を出したのは12歳だ。

 12歳は中学1年生の年齢である。その年齢でマリファナに手を出したくなるほどの苦痛があるのだろうか。しかし、さらに驚いたのはその時の学校の先生の言葉である。父親のデヴィッドが12歳で手を出したことに驚いている中「その年頃に手を出すものです」と、常識のように答えたことだ。アメリカの教育現場では当たり前の光景なのかもしれない。

 父親デヴィッドがそうであったように、マリファナや薬物にて手を出しても依存せずにやめられる人も多くいる。しかし、ニックはそうではなかった。薬物の闇は手を出さなければわからない。だがその闇は一生知らなくていい闇だと思った。

 

親という不完全で不思議な存在

 しかし、この本からは薬物の情報もたくさんあるが、読者が感じるのはという存在についてではないだろうか。

 マリファナだけに止まらず、覚醒剤やコカイン、メタンフェタミンと次々と手を出し、変わっていくニック。一緒にサーフィンをしたり、寝る前に15分ごとに部屋に確認しに来てと頼んでいた小さい頃のニックは、薬とともに姿を消す。

 しかし、薬物に手を出したあと、ニックも正気に戻ると後悔に苛まれる。

 そんな息子を何度もセラピーに通わせ、何人もの医者の元へ行かせる。薬物で、普段とは違い凶暴になる息子。セラピーで立ち直り、いつもの兄弟思いで想像力あふれるニックに戻ったと思ったのも束の間、また薬物の誘惑に取り憑かれる息子。

 「もう、支えきれない」と思っても、捨てることができないのが親なのだと痛感した。医者や、セラピーの人間も結局は他人。「もう、知らない」ということができる。でも、親は無理だ。帰ってこない息子が、どこかで死んでいるのかもしれない、いつ病院に運ばれるかわからない(実際、ニックは運ばれた)。そんな恐怖と四六時中戦っている。

 私は、大学生だがこの本を読んで親のことが少し理解できたと思う。というより、今まで親に対して思っていた印象が変わった。

 私は両親とは仲はいいが、私は私だ。親とは家族だし特別な絆はあるが、別の人間なのだ。と思っていた。しかし、親は私たち子供が親に対して思っている以上の絆を子供に感じている。別の人間だとは割り切れない感情を持っている。

 そんなことに気づけた。呆れて、突き放したくなるような子供でも、なぜか放っておけない。もちろん、例外の家族はいるだろうが、beautiful boy の家族はそんな存在だ。

 義理の母親、カレンもニックを見捨てずに励まし続けた。また、デヴィッドは自分の過去の薬物経験がニックに影響したのではと思っている。それは無いとは言えないだろう。デヴィッドとニックの母親の離婚もニックの心に少なからず傷をつけいていた。ニックが薬物に走った理由は、依存症になってしまった理由は、もしかしたら親が原因なのかもしれない。

 子育てに正解はないし、親が原因で悪化するのかもしれない、でも親の愛情は子の持つ愛情より上なのも事実で、家族、親、不思議な絆を考えるきっかけとなった。

 

映画

 この本が、ブラット・ピット制作で映画化された。主演は、私が個人的に今世界で一番美しいと思っている俳優、ティモシー・シャラメである。

 美しい少年が薬物へと落ちていく様がリアルに描かれる。彼の腕にある注射痕なども避けられることなく描かれ、痛々しさも感じる。正直、映画では伝わり切らないところも多くあるため、本を読んで欲しいが、映像であるからこそのリアルさを映画では体験できる。

 

 映画では最後まで描かれないが、現在ニックは薬物を完全に断ち、結婚して脚本家として活動している。近年話題のドラマ「13の理由」の脚本も書いた。ニックが書いたと、知ってあの衝撃ドラマが誕生した理由が腑に落ちた。

 後書きでデヴィッドが書いていたように、あの頃のニックを思えば今まで生きているのは奇跡だ。

 

 映画はAmazonプライムで見れるので、会員の方は是非見て欲しい。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

BANANA FISHでたどるアメリカ文学

今週のお題「読書感想文」

 

2018年に放送され話題となったアニメ「BANANA FISH」。エンディングテーマのprayerXは人気バンド「King gnu」さんの曲ということもあり、有名なのではないでしょうか。

 

そんなBANANA FISHは舞台がニューヨーク、マンハッタン。主人公のアッシュはストリートギャングでありながら、IQ180以上で容姿端麗な金髪碧眼の美少年。彼はBANANA FISHという薬物の真相を知るにつれて大きな問題に巻き込まれていく。そんな中、日本人の青年、英二と出会う。唯一無二の友情を手に入れた2人が真実に向かって突き進む。

そんなお話です。

 

今回はその BANANA FISHで各話の題名にもなり、主人公のアッシュが好んで読んでいるアメリカ文学について紹介したいと思います。

 

題名のリスト

各話の題となった本のタイトルと著者

 

読みやすい短編

短編は読みやすく、アメリカ文学を読むきっかけになりやすいです。

その中でも、おすすめを2つ紹介します。

 

バナナフィッシュにうってつけの日 / サリンジャー

BANANA FISHの題名であり、全ての始まり。サリンジャー著の短編集「ナインストーリーズ」に入っています。

サリンジャーの作品の中で度々登場するグラース家の長男が登場します。これを読むと、他のサリンジャーの作品も読みたくなるでしょう。

かなり短く、しかし衝撃的な作品であるこの短編。BANANA FISHの題名である理由がわかると思います。


 

 

キリマンジャロの雪 / アーネスト・ヘミングウェイ

主人公、アッシュが好んで読んでいた短編小説です。

アッシュはこの小説の冒頭に描かれているヒョウについての一節を語ります。

アッシュの持つ死生観や、BANANA FISHの世界観を構築するものが、これを読むとわかるように思えます。


 

 

読み応えある、長編作品

名作や、長編も題名には数々入っています。

長編は本を読み慣れていない人にはきついかもしれないです。ですが、アメリカ文学には独特の雰囲気があるのでそこにハマれば次々と読みたくなるはず!

そんな2冊を紹介します。

 

海流の中の島々 / アーネスト・ヘミングウェイ

文庫で上下に分かれています。結構、長い本です。私は2018年高校時代に図書館で借りましたが、その前に借りた人は1990年代で自分が生まれるより前で驚きました。現代では、それくらい読む人が少ないマイナーな本なのかもしれません。

 

この小説はBANANA FISHの中で、ブランカが好んで読み アッシュが少年時代に読んでいた本です。

ヘミングウェイの人生や、当時の様子、そして「孤独」が描かれています。

3つの章に分かれていて、それに続く4つ目の章が有名な「老人と海」なのです。少し、読みにくいと思われたりする方は、「老人と海」を読んでから入ると読みやすいと思います。

BANANA  FISHではブランカの主観の語りは多くありません。しかし、彼が何を感じていたのかが、この本を通して伝わるような気がします。

 

ライ麦畑でつかまえて/J.D.サリンジャー

BANANA FISHの最終話の題でもあります。

ライ麦畑は、青春小説として有名です。しかし、この青春というのは、現代の感覚でいうキラキラ輝いた、汗と涙の光る学生生活!というのとは違います。

思春期のころ、誰もが思ったことがあるような、16歳の少年の心のうちを語ったものです。一見、読んでいて痛いような思春期ならではの考えや表現、それを描いたこの小説。時代に関係なく読む人がいるのは納得です。村上春樹さんの訳が上手なのもあると思います。

BANANA FISHの主人公アッシュと英二も18歳前後の青春時代真っ只中。彼らが、世間に何を思い、何を考えていたのかこの小説からも読み取れるかもしれません。


 

 

アメリカ文学からアッシュの心を読む

BANANA FISHの各話の題となったアメリカ文学たち。これらを読むことで、アッシュが何を考え、ブランカが、英二が、彼らがどんな思いを抱いていたか考える。

そんな、「BANANA FISH」をさらに深く感じられるアメリカ文学

文学としても楽しめて、「BANANA FISH」もさらに楽しめる。

ぜひ、アメリカ文学の魅力に触れてみてください。


 

 

 

 

 

 

自粛期間でも、刀剣男子と一緒に祭を楽しもう!

今週のお題「暑すぎる」

 

暑すぎる。家から出たくない。出る用事もない。何より、むやみやたらと出るべきではない。

  

私は夏が大好きなので、毎年、夏ってかなり遊んでます。

お祭り行きたいなぁ、って思いますよね。

 

しかし!今年の夏は刀剣男子と夏祭り気分を味わおうと思います。

 

刀剣男子と夏祭り!

もちろん、真剣乱舞祭2018で!

 

真剣乱舞祭は、ミュージカル刀剣乱舞に出た刀剣男子たちが集まり、歌と踊りをメインに披露するコンサートのようなものです。

毎年テーマがあるのですが、2018年は日本の東西祭対決です。それぞれの地方に由縁のある刀たちがチームに分かれる。

西は祇園祭、土佐のよさこい祭、徳島の阿波踊り、東はねぶた祭よさこいソーラン祭、雪まつりがテーマに歌と踊りが繰り広げられる。

祇園祭の山車と、ねぶたは、それらしい装置とともに登場し、それがよりお祭り感を増し会場を盛り上げる。

 

巴型薙刀は自分が由縁のある物語がないため、「祭」と言う物が何かを考えている。

「祭とは何か」、彼が最後に出した答えは誰の心にも納得のいくものであった。

 巴形薙刀

2.5次元初心者にもおすすめ!

真剣乱舞祭2018は、2.5次元を初めて見る人にもおすすめしたい刀剣乱舞の、刀が人の姿となって現れていることだけを、理解していれば誰でも楽しめる。

 

テーマが日本の祭であるため、誰でも理解できる。また、今まで見たことがないお祭りも雰囲気が楽しめる。そして、全国の祭をハイクオリティで一度に楽しむことなど、普通は経験できない。それをかっこいい彼らが盛り上げることで、興奮間違いなしだ。

 

また、すでに配信では見た人にはぜひ、DVD、Blu-rayを見て欲しい。

幕張の大きな会場を刀剣男子たちがいかに盛り上げていたのか、より動きがわかって見ていて楽しい。

バックステージの巴形薙刀役の丘山さんの様子は、見ているこちらを楽しくしてくれる。

 

 刀剣と夏を楽しもう!

こんな時代、夏らしいこともできず、お祭りもない2020年。

そんな日々を、家で刀剣男子と共に全国の祭を楽しんでみては?

 

初めて見る方や、刀剣乱舞が気になっている方はdアニメで月額400円でミュージカル刀剣乱舞が見れるので、ぜひ試してください。dアニメは月によっては初月無料もしていますので、その機会に見るのも良いと思います。

 

そして、刀剣乱舞がすでに好きな方には円盤を買って見てバックステージまで楽しんで欲しいです。

 

この夏、刀剣男子と楽しい夏祭りを過ごしましょう!


 

 

 

 

 

 

 

自粛期間に出会った、2.5次元の世界

今週のお題「2020年上半期」

 

自粛期間に新しい世界に出会いました。

2.5次元の世界です。

 

2.5次元とは、漫画やアニメといった2次元の作品を3次元の俳優が演じることで出来上がるエンターテインメントのことです。

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刀剣乱舞 at厳島神社

 

元々、ツイッターで見つけて好きになった俳優さんが2.5次元の俳優ということで気になってはいたのですが、なかなか手が出せずにいた領域でした。

しかし!

自粛期間にDMMさんが、刀剣乱舞のミュージカルとステージを一挙無料配信してくださったのです。

 

興味本位で一話みてみると、あまりのクオリティーの高さに惹きこまれ、全ての配信が終了した頃にはすっかりファンになっていました。

 

2.5次元の舞台は、若手の俳優さんが多いので、技術的には物足りなさを感じるかもしれません。しかし、その分、彼らからあふれる熱意は感動をもたらしてくれます。

 

刀剣乱舞では、俳優さんのことを何も知らなくても、作品のことを何も知らなくても楽しめました。

その後、様々気になって、たくさん調べると、もう一度見たくなる。また、新しい発見がある。そして、何度でも見たくなる。そんな魅力を持った作品でした。

 

コロナは、やりたかったことを全て私たちから奪っていきました。でもその期間に唯一良かったと思えることが2.5次元との出会いです。

今まで、知らなかった舞台の世界に魅きこまれた、そんな上半期でした。